「現場の社員が面接や求人に協力してくれない」 「採用は人事がやるもの、と丸投げされてしまう」

このような「現場との壁」に阻まれ、孤独な戦いに頭を抱えている人事担当者は非常に多いのではないでしょうか。言うまでもなく、採用活動は人事だけで完結するものではありません。各部署と密に連携し、現場のリアルな魅力を候補者に届けてこそ成功するものです。しかし、現場に「もっと協力してほしい」と正論をぶつけるだけでは、関係性がギスギスして逆効果になりかねません。

そこで、成長企業の間で注目されているのが、人事と現場がワンチームとなって動く「全員採用(スクラム採用※)」という体制です。

どうすれば現場の社員が、義務感ではなく「気持ちよく、自発的に」採用に協力してくれる仕組みを作れるのでしょうか。今回は、弊社森数が過去に大手企業で実践し、受身だった組織を激変させた実体験をもとに、全員採用を成功に導く6つの実践Tips(秘訣)を分かりやすく解説します。

(※)全員採用(スクラム採用)とは? 人事や経営陣だけで採用をせず、現場の部署を巻き込んで最大の効果を創出する体制のこと。※「スクラム採用」は株式会社HERPの商標又は登録商標です。

※この記事は2023年2月22日に弊社の森数がVoicyでお話した#51 チームで遠くへ行く方法:全員採用を実現するにはを元に記事化したものです。

会社の「便利屋(サービス部門)」としての採用チームからの脱却

現場が採用に非協力的なのは、人事チームが「現場の要望通りに作業するだけの便利屋(サービス部門)」になっているからかもしれません。森数が過去に大手企業の採用担当になった際、組織は分断されていました。現場からの要望をメールで受け取るだけ。 同じフロアにいるのに会話もありません。 つまり、現場は人事に全く期待しておらず、協力体制もゼロだったのです。

この状態を打破し、現場を巻き込むための具体的な手順が、以下の6つのTipsです。

現場を巻き込む!全員採用を仕組み化する6つの実践Tips

STEP1 データを集めて「採用のボトルネック」を可視化する

現場に協力を仰ぐ前に、まずは人事がデータ(数字)で現状を正しく把握しましょう。部署の求人を出すのをやめ、以下のKPIを可視化します。

チャネルの適正:職種ごとに、適切な媒体や手法を選べているか
選考の歩留まり:応募から入社承諾までの間で、どこで候補者が落ちているか
定着と活躍:入社した人材が、現場で本当に活躍しているか

森数が当時、過去のデータを洗い出したところ、採用計画すら存在しないことが判明しました。そのため、まずはデータを集めることからスタートしました。良質な仮説を立てられる状態を作ることが最初のステップです。

■森数が過去に洗い出した問題点
・採用計画がない
・予実管理がされていない
・採用スペックが各部署任せ
・媒体選定や掲載方法に戦略もない
・一次面接官(採用人事)が配属先の仕事について知らない
・二次面接官(現場の上長)が採用面接のルールを知らない
・選考に進んでる候補者のフォローが全くされてない
・採用ページがイケてない

こちらのnoteで本質的な採用をするための情報をまとめていますので是非ご一読ください。

STEP2 現場の「一番の理解者」になるための行動を起こす

データが揃ったら、現場の信頼を勝ち取るために「人事自らが現場を知るアクション」を起こします。 「よく分からないから任せる」という姿勢では、全員採用は実現できないからです。

  • アクション例:募集部署へのインタビュー、現場面接への同席、求人媒体の取材同行

最初は現場の反応が冷ややかでも、マメに顔を出し続けましょう。 仕事内容や必要な能力(スペック)を人事が深く理解することで、一次面接での「魅力づけ」の精度が劇的に上がります。 現場から「次の面接も一緒にどう?」と声をかけられる関係を目指しましょう。

STEP3 現場の実態に合わせて「採用要件」をチューニングする

現場の人間は業務のプロですが、採用のプロではありません。 そのため、求める理想が高すぎたり、実態とズレた要件を設定したりしがちです。人事が現場に入り込み、以下の問いを繰り返して採用要件を最適化(チューニング)しましょう。

  • 今のチーム内で、本当に不足している役割は何か?
  • 活躍している既存メンバーには、どんな共通点があるか?
  • なぜ、そのスキルや経験が必須なのか?

森数がある花形部署の採用要件を現実に合わせてチューニングした際、半年で20人以上の採用に成功しました。市場に合わせた「正しい要件定義」をサポートすることが人事の役割です。

採用要件n具体的な作り方はコチラを参考にしてください。

STEP4 成果を出すための「健全な衝突(ヘルシーコンフリクト)」を恐れない

現場の顔色をうかがうだけでは、良い採用はできません。 プロとして、採用成功のために譲れないことは対等にぶつけ合うことが大切です。

  • 伝えるべきことの例:「面接の日程調整をもっと早くできませんか?」「この候補者を落とした、具体的な理由は何ですか?」

こうした「健全な衝突(ヘルシーコンフリクト)」は、お互いが本気である証拠です。 真摯に向き合い続けることで、単なる「便利屋」から「対等なビジネスパートナー」へと関係性が進化します。

STEP5 現場面接官の「選考スキル」を向上させるマニュアルを作る

現場の面接官(上長など)が、面接の作法やルールを知らないケースは非常に多いです。 例えば、遅刻や準備不足、不適切な質問は、会社の悪評(口コミの悪化)に直結します。

■過去の企業で出会った選考での問題点
・面接開始時間に遅刻
・履歴書・職務経歴書に目を通していない
・公正な採用選考に抵触している
・淡々と応募者の話を聞くだけでアトラクトやよく思ってもらおうという努力はしない
・履歴書・職務経歴書に直接メモをとる(机に広げて書いているから丸見え)

人事は以下のTipsを取り入れ、面接のクオリティを均一化しましょう。

  • 対策1:共通の「採用マニュアル」を作成して配布する
  • 対策2:誰でも同じ質問ができる「ヒアリングシート」を用意する
  • 対策3:人事が面接に同席し、終了後にその場でフィードバックを行う

どんなことが選考でタブーとされるか気になる方は以下noteを参考にしてください。

STEP6 情報共有を仕組み化し、「受身の採用」から「攻めの採用」へ

人が辞めてから慌てて募集をかける「受身の採用」は、現場の負担を増やすだけです。 現場との連携が深まってきたら、情報が事前に人事に集まる仕組みを作りましょう。

  • 欠員が出る前の、事前の増員相談
  • 候補者の進め方や、受け入れ体制の事前調整

募集前の段階から現場と協働することで、「攻めの採用」が可能になります。 要件のズレがなくなるためミスマッチが減り、入社後の定着率向上にも直結します。

「早く行きたければ一人で行け、遠くへ行きたければみんなで行け」というアフリカの諺(ことわざ)の通り、チームで共通のゴールを目指すことこそが、全員採用のゴールです。

STEP0 全員採用を推進するために、人事が捨てるべき「バイアス」

「現場の仕事は専門的でよく分からない」 「現場のメンバーとはカルチャーが合わない」 人事担当者がこうした苦手意識(バイアス)を持っていると、現場への丸投げや責任放棄に繋がります。

上手く協働できない時は、協力してくれないという結果だけを見るのではなく、その背景にある「現場のメンタルモデル(思い込みや余裕のなさ)」を掘り下げてみましょう。

先入観を持たず、現場を知る努力を続け、共通のゴールを提示し続ける姿勢が何より大切です。

まとめ

全員採用の体制を築くことは、単に採用人数を増やすための手段ではありません。 現状を正しく理解し、ゴールを明確に共有して、強い組織をつくるための基盤です。

インセンティブなどの一時的な施策に頼るのではなく、現場が「一緒に良い仲間を集めたい」と思える仕組みと関係性を、人事からアプローチして作っていきましょう。

「自社でも全員採用を推進したい」「現場を巻き込む具体的な仕組みを作りたい」とお悩みの際は、ぜひ一度ユアパトにご相談ください。