この記事は2023年2月22日に弊社の森数がVoicyでお話した#50 採用を進めるとぶつかる壁。リファラル採用のコツについても話します!を元に記事化したものです。
リファラル採用は、自社の社員や知人など信頼できる人から人材を紹介してもらう採用手法です。メルカリやセールスフォースも採用の5割はリファラル経由であり、多くの企業がリファラル採用に注力しています。実は前職の株式会社ミライフ(以下、ミライフ)は在籍当時、半分以上がリファラル採用による入社でした。
今回は、創業期から社員数10~20人くらいでぶつかる採用の壁とリファラル採用文化を定着させていくポイントにフォーカスしてご説明していきます。
創業期、採用活動が本格化した時にぶつかる壁
事業のフェーズごとに適切な採用手法は変わります。創業期はリファラル採用で人を増やすことが多いと思います。しかし、伝手も有限であるため、リファラル採用の次の施策として求人媒体の活用を始める会社が大半です。スタートアップの場合、ランニングコストがあまりかからない媒体を選択するケースが多いのですが、ここから悩みが二手にわかれます。
採用要件が上がっている
リファラル採用で優秀な人が集まったため、採用要件が非常に高くなっている点です。要件が高いため、自社にフィットする人が採用できないという悩みが生まれます。
過去に私も同じ問題に遭遇しました。スタートアップは、最初はツヨツヨの野武士みたいな人たちが集まりやすくなり、「今いる人たちぐらいの能力を持った人を採用したい」という気持ちになります。加えて、人手不足の中でみんな頑張っているため、教育する時間がなく、経験者しか受け入れられないのです。
妥協するわけではなく、現実的なラインで着地するには事業計画と採用市場に関する知識が必要となります。これがなかなか難易度が高いのです。私は事業計画を立てる際、以下のことを考えることが大切だと思います。
■事業計画を立てる際に考えるべきポイント
事業計画を引いたその先、未来の組織ってどうなってるか?どうあるべきか?
社内の今いるメンバーはどうなってるか?
採用で解決する課題はどこで、そのためにどんな人が必要なのか?
考えた要件で採用ができなかった場合、採用の時期をずらすのか?時期を優先して、人を採ることを優先するのか?
採用活動のリソース不足
ランニングコストがあまりかからない媒体は自分達で運用が必要な媒体です。つまり、手がかかります。適切な媒体を選ぶために下調べをし、複数の媒体社の営業の話を聞き、ようやく契約に漕ぎつけます。その後、求人原稿のベースを考え、公開したら応募者のスクリーニング、候補者対応や日程調整業務がスタートします。
創業期は、みんな一つの職種だけではなく、何かしらの仕事を兼務で対応しているケースが多いのではないでしょうか?人事の専任担当者が不在のため、採用活動に集中して運用する時間も余裕もありません。媒体ごとに結果が出る運用方法は違いますし、そもそも運用し続けることが大変です。やることが盛りだくさんの上に難易度も全て高いのです。
このように、創業期からの採用活動はいくつも分岐があり、ぶち当たる壁も採用手法も社員数やフェーズによって変わってきます。けれども、採用媒体や転職エージェントを活用するようになったとしても、変わらずリファラル採用は組織の文化として根付かせておくことを強くお勧めします。
リファラル採用の大前提
リファラル採用は知り合い、場合によっては近しい大事な人を誘う行為です。紹介する側の社員が「いい会社だな」「仕事が楽しい」と思っていないと声をかけようとは思いません。
「成功報酬でインセンティブを払えば社員からのリファラルの推薦が増えるのでは?」という相談を受けることがありますが、そもそも、いい会社だと社員に思ってもらえていなければ、短期的には効果があったとしても長期的な効果は薄く感じます。なぜなら、インセンティブが発生することによって、別の思惑が混じり、本来求めるリファラル採用から遠ざかり、良い結果に繋がらないリスクもあるためです。
ですから、リファラル採用がうまくいかない場合は、根本原因から解決するべきといえます。つまり、従業員エンゲージメント(※)を高めることです。採用を成功させるポイントは現場との協力体制であることに間違いありません。採用をお願いするというより、採用に協力したいなと当事者意識を持ってもらえるような組織やカルチャーづくりが肝要です。
(※)従業員エンゲージメント:従業員が会社の価値観や理念に共感し、会社に愛着や共感を持ち自発的に貢献したいと思う意欲。
リファラル採用を促進するためのポイント
リファラル採用に積極的なことを社員にアピール
「もう伝手が尽きたから難しい」と判断するのは時期尚早かもしれません。そもそも、現場の方が募集職種や求める人物像について知らないこともあるためです。人事からアナウンスをしていたとしても、伝え足りない、伝わっていないと思っていた方がいいです。
また、全員が紹介してくれることはないため、まずは紹介してくれる人に注力してお願いするところから始めましょう。ただ紹介して欲しいと頼むだけではなく、面談やオンラインランチで自社にフィットする人がいないか地道に聞き続けましょう。言い続けることが意外と大事です。
採用に至らなかった場合のケアまで抜かりなく
どの会社でもあると思いますが、せっかく知り合いを紹介しても選考が見送られた時に気まずくなるという問題があります。そうなると困るから紹介できないし、したくないという人も意外といます。
例えば、必ず最初はカジュアルな場をセットして、フィットしない場合は選考に進めないよう、面談中に期待値調整をするという手もあります。選考上でご縁がなかった場合、お詫びの意味を込め、また選考者と紹介者の関係性を壊さないための配慮として、一緒にごはんに行ける制度がある会社もベンチャー界隈では見かけます。
人や会社の”器の大きさ”は物事がうまくいかない時にほど露呈します。もし、自社にご縁がなかったとしても、口コミやSNSで業界内に広まることも往々にしてあります。また、将来違った形で再会し、頼もしい仲間になる可能性も0ではありません。採用に至らなくとも、紹介者と紹介してもらった人には礼儀を尽くしましょう。特に申し訳ないと思わせてしまう紹介者の心のケアを重点的に行うべきでもあります。
前職のミライフでは、丁寧な対応とフィードバックをし、選考を受けてくれた人に何かしらお返しができるようにしていました。
リファラルへのメンタルブロック要素を排除する
私が過去に働いていたエンジニアしかいない組織での実例です。人見知りな社員が多く、リファラル採用に協力しようと思っていたとしても「どうやって誘ったらいいかわからない」「自分から誘うのは勇気がいる…」という心理的な阻害要因がありました。
そこで、知人の方に配ってもらうために、名刺くらいのサイズの招待券(いつでもオフィスに遊びにきてくださいやランチ奢りますという内容)を複数パターン用意して、良いと思った人に招待券を渡せばいいようにしました。社員にやってもらうことをシンプルにしたことにより、名刺作成は功を奏し、採用の成果を出すことができました。
他にも、勉強会、ランチ会など何かしらのイベントや企画を定期的に用意し、社員の知人に直に自社のカルチャーを体験してもらう場を設けました。このように、社員への心理的負担を減らし、会社側で自社について知ってもらうきっかけを作ることもお勧めの手法です。
アンバサダーとして社外へ発信
そして、最後にやっていただきたいことは、会社について積極的に外に発信することです。SNSやnoteなどで継続的に発信することで、認知度を高めていけます。社員がいざ知人に会社を勧めようとする時にも「こんな会社だよ」と紹介しやすくなるメリットがあります。また、認知度が高まり、会社の魅力が広まれば、社員の知人の方から「あなたの会社を紹介して欲しい」と連絡があるかもしれません。
ただし、どのような会社や組織で、どのような未来を目指しているかをまず社内で言語化し、浸透させておくこともお忘れなく。大切な価値観が共有されていないと、せっかくの発信も意図しないものになり、自社らしさを伝えることができないかもしれません。インナーブランディング(※)の重要性を認識し、カルチャーを言語化し、自社らしさを育んでいくことが大切です。
(※)インナーブランディング:社内に向け理念やブランド価値、文化について浸透させる取り組み。
以下のnoteで採用活動を支えた社外発信の取り組みについてまとめていますので、是非ご覧ください。
まとめ
採用は、これから一緒に働く人に向けての活動ではありますが、今いる社員にもしっかりと目を向けて組織活性を上げる取り組みをしていくべきといえます。外発的な動機は長続きしません。リファラル採用文化を根付かせるには内的動機を育むことが不可欠といえます。