前回の記事では、振り返り面談の意義と進め方について解説しました。今回のテーマは評価会議です。振り返り面談で被評価者と評価者が認識をすり合わせた後、評価会議では組織全体の目線を統一し、評価結果を最終決定します。評価の公平性や透明性を保つだけでなく、次期の育成計画や人材戦略に繋げる重要なプロセスとしても機能します。

    評価の最終決定だけではない!評価会議の意義と目的

    評価会議には、単なる最終評価結果の確定以上に、以下のような意義・目的があります。

    評価会議には、単なる最終評価結果の確定以上に、以下のような意義・目的があります。

    評価制度が適正に機能しているかを確認

    評価基準や評価方法が被評価者にオープンになっているか、特定の被評価者を有利または不利に扱っていないかを確かめ、公平かつ透明性ある制度運用がなされているかをチェックします。

    人材情報を共有し、育成や配置戦略に活用

    被評価者の強みや改善点を共有することで、次期の育成計画や配置計画に活かします。これにより、組織全体で戦略的な人材マネジメントを進める基盤を整えます。これらの情報は、等級判定会議やキャリア面談の参考資料にもなります。

    評価者間の目線を合わせ、評価スキルを向上

    評価基準や判断ポイントについて意見交換を行うことで、評価者同士の目線が揃い、評価の一貫性が向上します。この議論は、評価者自身の判断力や評価スキルを磨き、制度全体の精度向上にも繋がります。

    評価会議の質を高めるために欠かせない観点

    意味のある評価会議にするためには、以下の観点を意識して議論を進めることが重要です。これらを基に、評価の妥当性と一貫性を確保し、公平性と納得感を高めましょう。

    評価基準の妥当性と公平性

    被評価者が等級要件や目標設定に基づき正確に評価されているかを確認します。特に、評価が非常に高いまたは低い対象者については、具体的な行動や実績を基に妥当性を検証することが求められます。

    絶対評価と相対評価の分離

    評価会議では、「評価」と「報酬」を切り分けて議論することが望ましいです。評価は個人目標の達成度を基準に行う「絶対評価」。一方、報酬は全体の評価結果を相対的に分布させる「相対評価」という視点で運用します。

    評価(絶対評価):

    被評価者が目標設定時に定めた基準、評価指標をクリアしているかどうかに基づいて評価を行います。目標達成度を他者との比較ではなく、事前に定めた目標・評価基準に照らして評価することで、評価の透明性が高まり、被評価者は納得感を持ちやすくなります。

    報酬(相対評価):

    一方、組織の人件費総額を管理する観点から、評価結果をそのまま報酬に反映することは難しい場合があります。例えば、全員が高評価を得た場合、報酬原資が不足する可能性があります。そのため、評価結果を基に報酬分布を調整する方法が一般的です。

    具体例:評価会議で最終評価を確定した後、報酬配分においては組織内の評価分布(例: S・A・B・C・D評価など)を設け、全体のバランスを調整するなどのやり方があります。

    評価者全員で「評価そのものは絶対評価」「報酬の分布は相対評価」とするルールを共有しておくことで、混乱を防ぐことができます。

    評価と報酬を切り分けることが望ましい理由

    評価を相対的な観点で行うと、被評価者が目標・評価基準ではなく、同僚との比較を意識した行動ばかりを取りがちです。これにより、本来目指すべき組織目標への貢献や、等級要件に基づいた行動から逸脱する評価ハックが横行する可能性が生じます。したがって、評価そのものは絶対評価で行い、報酬の配分時に相対評価の視点を取り入れるという運用が望ましいと言えるでしょう。

    ※評価ハックについてはこちらの記事でも取り扱っていますのでご覧ください。

    【前編】評価制度ハックについて語る(ゲスト:さかいふうたさん)

    目標外貢献の取り扱い

    目標外の貢献についても、必要に応じて適切に評価に取り入れると良いでしょう。目標以外の成果や行動が評価されないとなると、被評価者は自分が評価される行動のみ行い、組織の全体最適を考えた行動を抑制していまいます。事業成長を促すためにも、目標以外の貢献にも目を向け、評価とフィードバックをすることが大切です。

    基本の評価:

    評価の中心は、評価者と被評価者が事前に合意した目標の達成度や、それに付随する行動評価など、あらかじめ定めた評価基準です。これらにより、公平で納得感のある評価を進めます。

    目標外貢献の加点:

    被評価者が目標を超えて自主的に組織目標に大きく貢献した場合、その行動を加点要素として評価します。たとえば、被評価者が目標とは別でチームに特別重要な貢献をした場合、その行動を評価に反映させることで、貢献に報いる姿勢を示します。

    また、このアプローチは、組織として推奨したい行動や価値観を明確にし、それを促進する仕組みとしても機能します。

    次期への活用と育成戦略

    評価会議で得られた情報を、次期の等級判定会議や育成戦略に活かします。被評価者の強みや改善点を整理し、それを次期計画に反映させることで、より戦略的な人材マネジメントが可能になります。

    評価会議を効果的に進める3ステップ

    ここからは、評価会議をスムーズかつ効果的に進めるための具体的なプロセスをご紹介します。これらは一例ですので、組織の状況に応じて調整しながら活用してください。

    【1】事前準備:評価データの整理と議論テーマの明確化

    評価会議を円滑に進めるためには、事前準備が不可欠です。

    評価データの整理

    被評価者の自己評価、担当評価者の評価、目標達成状況などのデータを一覧化し、全員が同じ情報を共有できるようにします。

    注目対象者の特定

    評価が特に高い、または低い被評価者や、評価者間で認識にズレが生じている可能性がある被評価者を事前に洗い出し、議論の準備を整えます。

    【2】会議当日:評価結果の確認と最終決定

    評価会議では、全体の評価分布を確認し、各被評価者の評価内容について議論した後、最終決定を行います。

    会議の目的と進行方法の共有

    会議の冒頭で、評価会議の目的と進行方法を確認し、全員が同じ目標に向かって議論を進められるようにします。

    全体の評価分布の確認

    評価の分布を確認し、特に偏りがある場合は、その理由を検討します。また、前年や他部門との比較を通じて評価基準の一貫性を確認します。

    個別評価の議論

    各被評価者について、担当評価者が評価内容やその理由を説明し、他の評価者と議論します。事実に基づいた具体的な議論を行い、評価基準に沿った最終的な評価を確定します。

    【3】会議後:記録と次期への活用

    評価会議の内容や決定事項を記録し、次期の人材育成や配置計画に活かします。

    会議の記録

    各被評価者の評価内容や議論のポイントを記録し、必要に応じて評価者間で共有できるようにしておきます。

    次期計画への反映

    評価会議で得られた気づきや情報を次期の等級判定会議や育成計画に活用し、さらに今後の評価制度運用の改善にも繋げます。

    これだけは押さえておきたい!評価会議の注意点

    評価会議を円滑に進め、公平性と透明性を確保するためには、以下の点に注意が必要です。

    根拠に基づく議論を行う

    評価内容が印象や感情に左右されることがないよう、具体的な事例やデータに基づいた議論を徹底しましょう。たとえば、「頑張っていた」「印象が良い」といった抽象的な表現や評価者の主観ではなく、「この目標をこのような手法で達成した」「こうした行動が組織目標に貢献した」といった事実ベースの議論を行うようにしましょう。進行役は、抽象的な発言が出た際には具体例を求めることで、議論を適切に導きましょう。

    本来の目的からぶれないようにする

    評価制度の目的は、従業員の能力や貢献度を正しく評価し、その結果を事業成長に結びつけることです。しかし、評価者が自組織の被評価者を高く評価すること自体を目的としてしまうと、本来の意図が歪められ、期待される役割の達成よりも駆け引きや評価争いに陥る可能性があります。これにより、評価基準の公平性が損なわれ、組織全体での目線合わせが難しくなる恐れがあります。

    評価会議では、評価基準や事実の捉え方を全員で共有し、組織全体として一貫性を保つことが求められます。このプロセスを徹底することで、評価制度の信頼性が高まり、組織の成長に繋がります。

    まとめ

    評価会議は、個人の努力や結果を正しく評価し、組織の成長に繋げるプロセスです。公正な議論と基準の共有を通じて、評価制度の信頼性を高めるとともに、次期の育成計画や人材戦略の基盤を築くことができます。評価制度運用に課題を感じている方は、ぜひ私たちにご相談ください。経験豊富な専門家が、貴社に最適な評価運用の仕組みづくりをサポートいたします。

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