前回の記事では、評価基準やウエイト、判断軸の設定について解説しました。評価項目が決まった後、次に重要なのは「評価制度をどのように運用するか」です。評価基準が明確でも、運用サイクルや具体的な手順が定まっていないと、制度がうまく機能しません。今回は、評価運用のサイクルとその流れを確立し、トライアル運用を開始するための運用方針について解説します。
評価運用のサイクルとは?
評価制度を効果的に運用するには、運用サイクルを明確に定め、各ステップを適切に進めることが重要です。まずは、評価運用サイクルの全体像を押さえておきましょう。通常、以下の6つのステップが含まれることが多いです。
1. 等級決定会議
2. 目標設定面談
3. 中間面談
4. 振り返り(1次評価)面談
5. 評価会議
6. 評価フィードバック面談

これらのステップを繰り返すことで、評価運用がサイクルとして定着し、従業員と組織の成長を促す仕組みが確立されてきます。
運用方針の決定:最低限決めておくべきこと
評価制度を円滑に運用するためには、まず運用方針として最低限決めておくべきポイントを整理する必要があります。以下のような内容を定めることで、制度運用の流れがスムーズになり、幸先良いスタートが切れるようになります。
- 評価運用のサイクル・タイミング(等級判定、評価会議、被評価者と評価者の面談の機会・時期)を決める。
- 各ステップでの手順や進め方を明確にする。
- 実施に必要な資料の提出スケジュールや使用するツールなどを設定する。
各ステップにおける重要ポイント
具体的な評価運用サイクルの各ステップについてと、効果的に進めるための重要ポイントをご紹介していきます。自社の運用を構築・見直しする際の参考としてご活用ください。
1. 等級決定会議
等級決定会議は、部門や全社の評価者が集まって従業員の等級を決定する会議です。従業員の昇格・降格も判断しますが、ここでは前提として等級判定と人事評価の違いを理解しておく必要があります。
- 等級判定:次の等級で期待される役割を果たせるかを見極めるもので、未来の期待に基づき、報酬範囲を決めます。
- 人事評価:過去の業績に対して報酬の昇給・降給を決める実績評価です。
また、昇降格の判断においては以下がポイントとなります。
- 卒業方式か入学方式かを決定:
卒業方式:今のステージを完全に卒業してから次に進む方法。確実で安心ですが、成長の機会が遅れることもあります。
入学方式:未来の可能性に期待して早めに昇格させる方法。挑戦と成長のチャンスがあるけれども、抜擢の仕方によってはリスクも伴います。
- 昇降格の検討:
昇格候補者については、現等級の期待をどの程度満たしているか、次の等級に昇格するために必要な実績を言語化し、マネジメント層で合意します。
※降格が検討される場合は、事前に被評価者へ改善の余地があることを伝え、どのようなアクションで改善が見込めるかを話し合うことが大切です。
この会議での判断が将来の人材配置や成長に直接関わるため、透明性と公平性、丁寧な検討が求められます。

2. 目標設定面談
目標設定面談では、評価サイクルのスタートとして、被評価者(本人)と評価者(上司)が合意して目標を設定します。この面談の目的は、本人が組織目標と連動した目標を持ち、その達成に向けて主体的に取り組む姿勢を作ることです。
- 組織目標とのリンク:目標設定は、会社の全体戦略や部門目標と整合性を保ち、個々の従業員が組織全体に貢献できるようにします。
- 役割と等級に応じた目標設定:各等級や職種に合わせた現実的かつ挑戦的な目標を設定し、被評価者が納得できる形で進めます。
- 自己達成感の促進:目標を被評価者のありたい姿や成長に結びつけていくことで、モチベーションや達成感に繋げていきます。
また、初期導入時には、部門や全社のマネジメントレベルで目標設定会議などを実施して、評価者間の目標難易度の認識を揃えておくことで、公平・公正な運用に繋がるため効果的です。
3.中間面談
中間面談は、被評価者と評価者との間で目標設定後の進捗状況を確認し、必要に応じて目標の修正や支援策を話し合う機会です。この面談を活用して、目標達成のための計画を再確認し、必要な調整を行います。
- 進捗確認と修正:目標達成に向けた進捗を確認し、障害となる要因があれば、その解決策を一緒に考えます。目標の追加や修正が必要な場合も、この時点で行います。
- リスク管理:目標が現実的に達成可能かを見極め、リスクが見込まれる場合は早期に対策を講じます。
この面談を通じて、目標達成の可能性を最大化していきます。また、評価への不満要因となる「被評価者と評価者の間の認識差をなくす」ことも重要な目的の1つです。
4.振り返り(1次評価)面談
振り返り面談は、評価期間を振り返り、実際の成果や行動を被評価者と評価者が話し合う場です。ここでの評価が最終評価ではありませんので、その点に注意が必要です。
- 自己評価の確認:まずは被評価者が行った自己評価の背景や考えを確認し、理解を深めていきます。
- 評価の理由を共有:評価者は被評価者に対して、1次評価結果とそれらの背景や理由を共有し、相互の認識をすり合わせていきます。
5.評価会議
評価会議では、部門や全社の評価者が集まって、従業員の総合評価を決定していきます。評価者間で評価の目線を合わせ、各従業員に対する適切な評価に繋げることが大切です。
- 偏りの補正:各従業員の評価結果が全体のバランスに合っているかを確認し、特に評価が高すぎる・低すぎる対象者について重点的に議論します。
- 最終決定:各従業員の総合評価を確定し、必要に応じて最終的なフィードバック内容を整理します。
この会議は、評価結果を公正に決定するためには欠かせないステップであり、評価者間の認識を揃えて今後より望ましい運用に活かすための学習の場でもあります。
6.評価フィードバック面談
評価フィードバック面談は、評価者から最終評価結果を被評価者に伝える場です。フィードバック面談では、単に評価を伝えるだけでなく、今後の成長に向けて支援的に関わり、次に繋がる動機づけを意識していくことが求められます。
- フィードバックの透明性:評価基準や判断の根拠を明確に説明し、疑問や質問に十分に答え、被評価者の納得に繋がるように誠実に向き合っていきます。
- 強み・今後の課題と成長の方向性:被評価者の強みと成長に向けた課題を明確にし、お互いに次の評価サイクルに向けた目標設定の参考にします。
フィードバックの意図と信頼や期待が伝わることが従業員のモチベーションを高め、次の成長に繋がる重要な要素となります。評価フィードバック面談をきっかけに退職を考え始める人は少なくありません。評価者は必ず自分主語でフィードバックを伝え、被評価者が次のアクションに向けて前向きに動けるよう意識しましょう。
まとめ
評価制度の運用方針と流れを定めておくことで、組織全体として一貫した方向性のもとでスムーズに運用に入っていくことが可能になります。また、各ステップにおける重要ポイントを押さえた運用に落とし込むことで、従業員に対する評価が公正で透明性の高いものとなり、成長やモチベーション向上にも繋がります。
もし、評価制度の運用に不安や課題を感じている場合は、ぜひ私たちにご相談ください。一緒に課題を整理し、貴社の事業と人・組織の成長に繋げるための制度運用のあり方を描くお手伝いをさせていただきます。
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