前回の記事では、評価項目の具体化についてご説明し、従業員にどのような行動や成果を求めるかを明確にしました。今回は次のステップとして、評価基準・ウエイト(重要度)・判断軸の考え方と設定のポイントを解説します。

評価基準・ウエイト・判断軸を決める理由

「評価基準(達成度や求める活動レベル)」「ウエイト(重要度に基づく重みづけ)」「判断軸(判断基準と総合評価のロジック)」を設定することで、従業員が「成果や行動がどのように評価されるか」を理解しやすくなります。評価基準が不明瞭だと、従業員はなぜその評価になったのかがわからず、モチベーションの低下や不満を生むことになります。明確な基準を設定することで、従業員は注力すべきポイントを理解し、組織全体の目標に沿った行動が促されるのです。

評価基準の設定方法

ここでは、前回の記事で説明した「成果」「プロセス(成果目標に対する取り組み)」「行動(バリュー)」という評価項目をもとに、等級ごと(必要に応じてさらに職種別)の基準の書き分けに役立つ観点をご紹介します。各グレードに応じた基準を設定することで、従業員がどのレベルで何を期待されているのかを明示していきます。

等級ごとの評価基準の作り方

評価基準は、従業員の役割や責任の大きさに応じて異なります。例えば、マネジメント層にはより高度な意思決定やチームの成果が求められ、若手社員には個人目標達成や基本的なプロセスの遂行が期待されます。このため、等級ごとに基準を調整し、どの段階にいる従業員がどのような評価を受けるべきかを詳細に定義する必要があります。ここからは、成果(定量的な目標達成度)、プロセス(成果目標に対する取り組み)、行動(バリュー)それぞれの評価基準を考える観点をご紹介しましょう。

成果(定量的な目標達成度)における評価基準

成果基準は、従業員の業績や目標達成度を評価するための基準です。例えば、営業職では売上や契約数、エンジニア職ではプロジェクトの完成度や技術的な貢献が評価項目に含まれます。評価項目で設定した内容を、各等級で求めるレベル感に応じて書き分けていきます。

レベル感の違い(例):
若手社員(初級等級):定められた売上目標やプロジェクトの一部に対する責任
リーダー(中級等級):チーム全体の成果に対する業績推進やメンバー支援での貢献
管理職(上級等級):部門全体の業績達成や全社の新規活動への貢献

プロセス(成果目標に対する取り組み)における評価基準

プロセス基準は、成果を達成するためにどのようなプロセスや取り組みが行われたかを評価する基準です。若手社員はより個人の業績達成に向けた取り組み、管理職はより組織全体の業績達成に向けた取り組みが含まれてくるはずです。

例:
若手社員:新規顧客へのアプローチ件数や見積もり提出件数など
リーダー:自らの業績成果を上げながら、他のメンバーの取り組みを支援
管理職:戦略的施策の企画推進やチームの業務改善プロセスの提案と実行

行動(バリュー)における評価基準

行動基準は、企業の価値観や行動規範に沿った行動を評価するための基準です。若手社員はより個人の習熟やスキル獲得に近いものになり、管理職はより組織全体や事業・経営に資する貢献の色合いが強くなるでしょう。

例:
若手社員:チーム内での協力やフィードバックの受け入れ姿勢。
中堅社員:他メンバーへの積極的なサポートや、リーダーシップの発揮。
管理職:組織全体に良い影響を与えるためのリーダーシップや、チームの目標達成への指導。

ウエイトの設定方法

評価基準に基づき、各観点のウエイト(重要度)を決定します。ウエイトは評価項目の優先順位を示すもので、会社が何を重視するかによって変わります。たとえば、「成果重視」の方針なら、成果に高いウエイトを置きます。

1. 等級ごとの成果とプロセスのバランス

上位のグレードでは成果のウエイトが高くなり、プロセスや行動のウエイトが低くなる傾向にあります。特に管理職では、成果重視の評価が重要です。一方、若手や中堅ではプロセスや行動に重きを置き、成長を促す評価が有効です。

例: 若手社員(成果50%、プロセス30%、行動20%)、管理職(成果70%、プロセス20%、行動10%)

2. 職種ごとのウエイトの違い

職種によってウエイトのバランスが異なることもあります。営業職では成果のウエイトが高く設定される一方、研究職やクリエイティブ職ではプロセスやスキルの評価が重視されることも多く見られます。

例:営業職(成果60%、プロセス30%、行動10%)、研究職(成果40%、プロセス40%、行動20%)

3. 会社の方針との整合性

ウエイトの設定では、会社のミッション・ビジョンや事業戦略と一致していることが重要です。例えば、成長期の企業では、成果や業績を最重視し、短期的な目標達成に集中することが多くなります。一方で、安定した成熟企業では、プロセスや行動の評価を重視し、長期的な持続可能性や組織文化の醸成に力を入れる傾向も見られます。

判断軸(判断基準と総合評価のロジック)の設定方法

評価基準とウエイトが決まったら、次に「判断軸」を設定します。判断軸とは、評価の達成度を段階的に分けるための基準と総合評価を算出するためのロジックです。

判断軸には「判断基準」と「総合評価のロジック」が含まれます。この二つの項目を定めることで、従業員の総合評価を算出できるようになります。

判断基準の段階(S・A・B・Cなど)の設定

各評価項目(成果/プロセス/行動)に対して、段階的な基準を設けます。「S(優秀)」「A(期待以上)」「B(期待通り)」「C(改善が必要)」などの段階を設け、それぞれの達成度レベルを設定します。

 例:
【成果の評価段階例】
S 115%以上 125%未満
A 105%以上 115%未満
B 95%以上 105%未満
C 85%以上 95%未満

【プロセス・行動の評価段階例】
S 該当グレードより1つ上のグレード内容の仕事ができていた
A ほかの社員の模範となるような仕事ぶりであった
B 該当するグレードの評価基準の内容が当たり前に標準的にできていた
C 軽微なミスはあったが、その後の努力でカバーすることができていた     

このように、各評価項目に対して明確な基準を設定することで、従業員が自分のパフォーマンスがどのレベルにあるのかを理解しやすくなります。      

総合評価のロジック設定方法

各評価項目に基づくスコアを、ウエイトを考慮してロジックを決めて計算し、総合評価を算出できるようにします。ロジックを決めておくことで、個々の評価項目の重要性を反映しつつ、従業員全体のパフォーマンスを公平に評価できます。

例:成果60%、プロセス30%、行動10%のウエイトで合算し、総合評価を決定。
【ロジック組みの一例】
総合評価は、各評価項目(成果・プロセス・行動)の段階評価を数値化し、ウエイトに基づいて合算して決定します。

■数値化の例
各評価段階(S、A、B、Cなど)に点数を割り当てます。
S:5点
A:4点
B:3点
C:2点

■計算例
従業員Aの評価結果が以下の通りの場合:
成果評価:A(4点)
プロセス評価:B(3点)
行動評価:S(5点)

それぞれのスコアにウエイト(成果60%、プロセス30%、行動10%)をかけて合算します。
成果:4点 × 60% = 2.4
プロセス:3点 × 30% = 0.9
行動:5点 × 10% = 0.5
合計3.8点となり、最終評価はBとなります。

判断軸の透明性

評価の段階やロジックが透明であることは、従業員の納得感を高めるために重要です。しかし、時には環境要因や予期しない状況も考慮する必要があり、厳格な基準だけでは公正な評価ができない場合もあります。基本は透明な基準に従いつつ、状況に応じて柔軟な判断ができる仕組みを取り入れることで、評価の納得感がより高まることとなります。

まとめ

評価基準・ウエイト・判断軸の設定は、従業員が何を求められているかを明確にし、評価の透明性と納得感を確保するために不可欠です。評価制度の設計や運用において迷いがある場合は、ぜひ私たちにご相談ください。貴社の成長を促し支えるための評価制度の構築プロセスを効果的にご支援いたします。

↓↓↓続きはコチラ