ダイバーシティとは、性別や年齢、国籍、障がいの有無、性的指向、宗教・信条、価値観などが異なる人々の属性を尊重する考え方であり、日本語では多様性を意味する言葉です。近年、ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン(※)という概念を耳にする機会も増えてきたのではないでしょうか?
※ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン:企業理念や教育理念に多様性・公平性・包括性を取り入れ、公平な機会のもと、多様な人材が尊重し合い、能力を発揮できる環境を実現するという概念。
この記事は、2022年3月16日に弊社の森数がVoicyでお話した#7 多様性のある組織について考えるを元に記事化したものです。森数の考える多様性ある組織について自身の経験を踏まえ説明しています。
組織にダイバーシティを取り入れる方法
まずはじめに、多様性は”表層的な多様性”と”深層的な多様性”の2種類があります。表層的なものは外面的に判断しやすい多様性を指します。深層的なものは外面から判断しづらい内面的な多様性を指します。世の中で言われる多様性は、表層的な多様性を指していることが多いと思います。

女性の管理職比率などがまさに良い例です。転職活動中に「女性のマネージャーが今いないので、ちょうどよかった」と言われることも少なくありませんでした。他にも、「登壇者が男性ばかりなので、登壇してくれませんか?」とカンファレンスへの登壇依頼がくることもありました。呼ばれた理由が”私”に依頼したいからではなく、性別で選ばれたというのは腑に落ちませんでした。呼ばれた理由がどうあれ、事業や組織のためになることならやると決めていたので登壇はしたのですけどね。
多様性ってそういうことだったかな?組織にフォーカスして考えると多様性は何のために必要なのでしょうか?
日々たくさんの経営者の方とお会いしますが、多様性がある組織にしたいという会社がほとんどです。いくら表層的に多様性のある組織を作ったとしても、深層的な多様性を排除していたら多様性がある組織とは言えません。外から見てわかりやすい性別、人種、年齢で多様性を持たせたとして意味がありません。本当の意味で組織に多様性を持たせたいのであれば、深層的な多様性を意識した組織作りがポイントとなります。

単一組織も変化を迫られる時がくる
多様性のある組織ではないといけない、と言ってるわけではありません。多様性の逆を意味する単一組織にもメリットはあります。前提が揃いやすく、コミュニケーションコストが低くすみますし、意思決定が早い点は利点です。ただ、スモールチームならまだしも、人数が増えるといくらカルチャーフィットする人だけを採用しても多様性は絶対に生まれます。
みんなが同じ価値観ということはなく、人間ひとり一人違います。みんなが全く同じに見えてるとしたら、同調圧力でそうさせているだけかも知れません。しかし、それって本質的なのでしょうか?
会社にフィットしたことしか発言できないと、心理的安全性は極めて低い組織になります。自分たちの当たり前が、実は当たり前ではなく、異常なことに気づくチャンスを手放しているかもしれません。こうしたアンコンシャスバイアス(※)に気づけないと組織停滞や衰退を招くことにも繋がります。
(※)アンコンシャスバイアス:無意識の思い込みや偏見。
多様性のある組織のマネジメントは難しいので、前提が揃いやすい自社にフィットした人材だけを集めたくなる気持ちもわかります。それも良い戦略だとも思います。似た人といる方が楽ですし、単一組織の方がマネジメントする側のハードルは下がります。
ですが、マネジメントしやすいという理由だけで、組織や事業の成長を阻害する施策をとるのは得策ではありません。組織として大事なことは守りながら、事業発展のために多様性のある組織を作っていく必要が、どこかしらのフェーズ以降であると思います。
多様性がある組織に必要なマインドは、”違いを認めること”と”受け止めること”です。「違いを楽しめたら最高だな」と思って以前に在籍していた株式会社キャスターではそれをバリューの中に入れていました。ミッションやビジョンが腹落ちしていれば、それ以外全てを揃える必要はないと思います。
ミッション・ビジョン・バリューを定義したお話にご興味ある方はコチラをご覧ください。
多様性ある組織では全員同時に光を当てられない
多様性のある組織はマネジメント難易度が高いと、先ほどお話しました。それは多様性のある組織においては全員を同時に幸せにはできないからです。例を挙げると、会社の近くに住んだ人には手当を支給する制度があるとしたら、家庭の事情で近くに住めない人からは不満が出ます。また、社員のために大きな社宅を用意して喜ぶ人もいれば、そうではない人もいます。
みんなの意見を集め、議論して決めればいいかというと、それもまた難しい話です。メンバーが多様であればあるほど意見は分散しやすくなります。何をどう決めても全員から褒められることはありません。”全員が満足する人事制度はない”これは人事や組織作りに関わってる方々が実感していることかと思います。
不公平を踏まえた戦略的な人事戦略が必要
労働価値が異なる社員全員を幸せにすることは不可能です。不公平感は多かれ少なかれ必ず伴う前提の中で組織活性を上げてるためにはどうすればいいか。企業成長を達成していくために優先的に誰の、またはどの層のマイナス感情の蓄積を減らすためのアプローチを行うべきなのか。そこをしっかり戦略的に設定することが大事だと感じています。
会社として大事にしていきたい人物像や行動を明確にし、その人材が働きやすく、かつ働きがいを持つことができる職場環境を実現する。みんなを主語にするのではなく、会社としての強い意志を持って実行していくべきだと思います。
ポーズだけの合議制は何も意味がなく、決断することがリーダーやマネジメントの役割です。そうしないと、優秀なメンバーから抜けていきます。離職率が低いからいいとか社員の満足度が高いからいいという問題ではなく、組織活性が低い状態に留まるリスクというのは一気に上がります。実はこれが一番怖いことです。働きやすさや同質性を追求しすぎると落ちる罠のように感じます。
まとめ
組織戦略は経営戦略と同義です。組織課題は経営の問題と位置づけて徹底的に考え抜き、確実に実行する。何事においてもそうなのですが、この姿勢が大事だと思います。