前回の記事では、評価制度の運用方針を確立し、制度をスムーズに回すためのプロセスやポイントについて解説しました。今回のテーマは、その運用をさらに発展させるための「制度・運用のアップデート」です。定期的な見直しを通じて、制度が現実の組織状況に即したものになり、従業員や会社の成長を支える仕組みとして常に機能するよう改善し続ける必要があります。

評価制度は「作って終わり」ではない  

評価制度は、一度策定したら終わりではなく、変化に対応しながらアップデートすることが重要です。市場環境、組織のフェーズ、従業員のニーズは常に変化します。特にスタートアップ、ベンチャーなどは変化への対応を前提として認識しておく必要があります。そうした変化に対応できない制度は、次第に形骸化してしまいます。  

効果的な制度を維持するためには、「PDCAサイクル」を活用し、制度運用の改善を繰り返すことが肝要です。本記事では、評価制度を見直すためのサイクルの回し方や、改善のヒントについて詳しく解説します。

評価制度のPDCAサイクルを回す  

PDCAとは、「Plan(計画)→ Do(実行)→ Check(評価)→ Act(改善)」のサイクルです。これを継続的に回すことで、人事評価制度は組織の変化に対応し、効果を持続させていくことが可能になります。以下がPDCAサイクルを回す上でのポイントです。

1. Plan(計画):改善の目的を設定する 

改善にあたり、「何を目的とするか」を明確にします。制度が今のフェーズに合っているか、従業員の成長を支援できているか、など目的に沿って検証し、改善の方向性を定めます。

2. Do(実行):改善案を実施する

計画に基づいて、具体的な改善策を実施します。評価基準やプロセスの見直し、新しいツールの導入など、最初は部分的になど、トライアル運用を実施するのが効果的です。

3. Check(評価):結果を検証する

改善の効果を測定し、評価者や従業員からのフィードバックを収集します。例えば、評価に対する納得感が高まったか、制度が組織目標の達成に貢献しているか、などを確認します。

4. Act(改善):次のサイクルに活かす

検証の結果を踏まえ、さらに改善すべき点を明確にします。フィードバックを取り入れながらPDCAを繰り返すことで、評価制度はより自社にフィットし、自社の目的に向けてドライブするものへと進化します。

評価制度の改善ポイント  

ここでは最も声が挙がりやすい、評価制度の見直しで特に重要となる観点を紹介します。

1. 評価基準の見直し  

組織の戦略やフェーズに応じて、「成果」「プロセス」「行動(バリュー)」のバランスを見直します。

成長期の組織ではプロセスを重視して従業員の成長を促すことが有効な場合もありますが、事業戦略や市場環境によっては早期に成果を求めることが不可欠なケースもあります。

一方、成熟フェーズに入った企業でも、成果重視だけでなく、長期的な組織文化の醸成を目的にプロセスや行動を重視することがあります。こうした評価の力点は、単に成長段階で決めるのではなく、自社の戦略と組織のニーズに応じて柔軟に設計することが重要です。  

 例:
- 成果評価の項目に対する納得感は高いか?  
- プロセスや行動(バリュー)が実際の業務内容・組織方針を適切に捉えているか?

2. 評価制度運用のやり方の見直し:透明性と納得感の向上

評価の透明性が高いほど、従業員のモチベーションが高まる傾向にあります。現場での評価制度運用のやり方の見直しを通じて、評価が公正・適切に行われているか、納得感や成長に繋がるものになっているのか、何が課題になるのかなどを確認しましょう。例えば、フィードバック面談はただの報告・査定伝達ではなく、対話を通じた共感・成長支援の場として機能するように活用することが大切です。制度の仕組みそのものを改善するのか、運用を見直すのか、フィードバック面談の質を向上させる必要があるのかなど、改善のためのポイントはいくつかあります。

3. 評価者の継続的啓蒙とスキルアップ  

評価者間で認識の違いが生じないよう、そして、評価制度運用を通じてマネジメントをより効果的に進められるように、定期的な研修や勉強会を実施しましょう。評価者が持つ判断軸のばらつきをなくし、一定の水準・基準で評価ができるようにするとともに、従業員・組織の成果創出と成長の実現に向けた適切な関わりを身に着けていくことが求められます。

見直しを効果的に進めるためのヒント  

人事評価制度の見直しをスムーズに進めるための具体的なヒントをご紹介します。

1. トライアル運用の活用  

制度変更に際しては、まず一部の部署やグレードでトライアル運用を行い、効果や課題を確認してから修正して全社展開するのが効果的です。

2. 定期的なフィードバックの収集  

人事評価制度の改善には、評価者と被評価者の双方からの率直なフィードバックが不可欠です。アンケートや面談を通じて、制度運用の実態、制度に対する意見を集め、次回の見直しに活かしましょう。

- フィードバック収集例
アンケート:「評価制度に対する納得感はどの程度ありますか?」、「評価プロセスに改善が必要だと感じる点は何ですか?」

3. 見直しのタイミングを決めて実行する  

評価サイクルの終わりに合わせて、1年に1回または半期ごとに見直しのタイミングをあらかじめ設定しておきます。これにより、制度の改善を計画的に進められます。

4. 柔軟性の確保  

市場や事業環境の変化に応じて、評価制度はあまり精緻さを追い求めすぎずに一定の柔軟性を持たせることが大切です。変化に対応できる制度であることのほうが、長期的な運用を支えられる結果となります。

まとめ 

評価制度は一度導入して終わりではなく、組織の成長や変化に応じて進化し続けるものです。PDCAサイクルを回し、従業員や評価者からのフィードバックを取り入れながら制度を磨き上げることで、より自社に合った制度運用が実現します。

もし、評価制度の運用・見直しに関してお悩みがあれば、ぜひ私たちにご相談ください。経営、評価者、被評価者など様々な目線や意図を踏まえて共に課題を整理し、最適な制度へとブラッシュアップするお手伝いをいたします。制度の改善を通じて、組織の未来への道筋を一緒に描いていきましょう。

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