前回の記事では、等級制度の設計、各等級ごとの役割やスキル、期待される行動を明確にする方法について解説しました。今回は評価項目の具体化に焦点を当て、会社として何を評価し、どのような観点で従業員を評価するかを具体的に考えていきます。
評価の目的とは?
評価は、一定期間の従業員の業績や行動を客観的に把握し、報酬や昇進といった処遇を決定するだけでなく、組織の成長を促進し、従業員の成長をサポートするために有効な手段です。
また、評価は目標設定と密接に関わります。評価は、目標に対して従業員がどの程度成果を上げたのかを確認するものです。主に以下のような関係が成り立ちます。
目標が評価の基準になる:明確な目標に基づいて評価を行うことで、従業員が何を達成すべきか明確になります。
評価がフィードバックの機会となる:評価は、従業員に次のステップや改善点を示します。
成長を促す:評価を通じて、従業員は成長のためのアクションを明確にできます。
加えて、等級制度は評価の基盤です。各等級で求められる役割やスキルに基づいて、評価項目が設定され、昇進やキャリアアップの指針となります。等級が従業員の成長と役割への期待を示す一方、評価はその期待に対する達成度を定めて測る仕組みといえます。
評価項目の重要性
評価制度において、評価項目の具体化は、従業員がどのような行動や成果を求められているのかを明確にし、モチベーションを高めるための大切なステップです。適切な評価項目を設定することで、従業員は自分の業務が会社の目標やビジョンにどのように貢献しているかを理解しやすくなります。また、評価項目が公正で透明性があるものであれば、従業員の納得感が生まれ、組織全体のパフォーマンス向上につながります。
ここでポイントとなるのは、評価項目が単に個人の成果を評価するだけでなく、制度の大方針のフェーズで考えてきた自社のミッション・ビジョン・バリュー、会社や組織の理想状態、そして報いたい行動や成果としっかりと接続されているかどうかです。これらが評価の基盤に組み込まれていることで、評価制度が会社全体の方向性と一致し、従業員が共感を持って日々の業務に取り組めるようになります。
評価項目の具体化では、「成果」や「プロセス」、そして「行動」といった観点をバランスよく取り入れることがポイントです。これにより、従業員が単なる結果だけではなく、過程や行動、企業文化に基づいた行動規範も重視されていることを感じ取ることができます。
評価項目を考える際の観点
評価項目を設計する際には、会社の目標と従業員の成長をどうリンクさせるかを明確にする必要があります。評価項目を考える上で重要となる3つの観点を解説します。
1. 成果(定量的な目標達成度)
最もわかりやすい評価基準は「成果(定量的な目標達成度)」です。これは、売上や利益、プロジェクトの進捗といった具体的な数値で測れる目標に基づいた評価です。特に営業職やプロジェクトマネジメントなどでは、具体的な数値目標を設定することで、従業員のパフォーマンスを明確に評価できます。
例として、営業職であれば「新規顧客の売上」「既存顧客の売上伸長」「粗利」などが成果評価の指標になります。これらの目標が達成できれば、経営目標も達成されるように、組織の目標に直結した評価項目を設定することが大切です。
2. プロセス(成果目標に対する取り組み)
「プロセス(成果目標に対する取り組み)」とは、目標を達成するためにどのような活動を行ったかを評価する観点です。定量的な成果に加えて、取り組みを評価することで、組織が求める行動規範や価値観を評価基準に組み込むことができます。
例えば、営業職であれば以下のような取り組みなどが評価項目として考えられます:
・新規訪問件数
・既存訪問件数
・提案数
・見積もり提出数
これにより、結果だけでなくプロセスも重視され、短期的な結果だけにとどまらない、中長期的に成果を挙げるための取り組みに報いてさらに奨励していくことができます。
3. 行動(企業の価値観・行動規範)
「行動(バリュー)」は、企業が大切にする価値観や行動規範に基づいた行動をどの程度実践しているかを評価するものです。具体的には、企業のバリューやミッションに基づいた行動を評価することで、従業員が会社の方向性と一致した行動を取るよう促します。
行動評価では、企業の価値観や報いたい行動に沿って従業員がどれだけ一致した行動をしているかが問われます。例えば、「挑戦する姿勢」「チームワーク」「誠実な顧客対応」といった、会社のバリューに沿った行動を評価項目に組み込むことができます。こうした行動評価を取り入れることで、短期的な業績だけでなく、組織文化の維持や発展に貢献する人材を適切に評価することが可能です。
評価項目を考える際の論点
評価項目を設定する際には、会社の目指す方向や価値観、業務の性質に応じたカスタマイズが求められます。ここでは、評価項目を考える際に押さえておきたい主な論点を紹介します。
1. 組織の方向性に合った項目か?
評価項目は、組織のミッションやビジョン、組織目標に沿ったものでなければなりません。評価項目を設定する際には、会社がどのような成果や行動を求めているのか、組織全体の方向性と一致しているかを確認することが重要です。例えば、「イノベーションを推進する」というビジョンを掲げているのであれば、創造的な提案やチャレンジを成果目標やプロセス目標に組み込む必要があります。
2. 職種別の評価項目が必要か?
職種によって求められる成果やプロセスが異なる場合、評価項目も一律にするのではなく、職種に応じたカスタマイズが必要です。営業職、エンジニア、バックオフィスなど、各職種に応じた評価基準を設けることで、各業務に対して公平な評価を行うことができます。
たとえば、営業職では「売上や顧客数」などの定量評価が重要ですが、エンジニアの場合は「システムの安定性」「コードの品質」といったプロセスや成果が評価の中心となります。これらの違いを反映した目標設定観点・評価項目の設定が不可欠です。
3. 評価項目は現実的か?
評価項目は、従業員が取り組み次第で達成できる目標に基づいていることが重要です。目標が高すぎると、従業員のモチベーションが低下する可能性があり、逆に低すぎると成長が促進されません。各従業員が挑戦しながらも達成可能な目標を設定し、その達成度合いを評価することで、モチベーションを維持しつつ、成長を促すことができます。
4. 評価項目のバランスは取れているか?
成果、プロセス、行動の3つの観点を組み合わせ、自社の方向性に照らしてバランスの取れた評価項目を設計することが理想的です。例えば、成果が重視される職種でも、プロセスや行動も一定の割合で評価に含めることで、短期的な目標達成だけでなく、長期的な組織の成長にも寄与する行動を促すことができます。

まとめ
評価項目は、等級とともに、自社のミッション・ビジョン・バリューや理想の組織状態を反映しながら設定することが重要です。これにより、従業員がどのような成果や行動を期待されているかが明確になり、目標達成と従業員の成長、さらには組織全体のパフォーマンス向上が促されます。
もし、貴社で人事評価制度設計において迷いがある場合は、ぜひ私どもにご相談ください。貴社がビジョンや目標に沿った評価項目を具体化し、組織の成長を促進するためのお手伝いをいたします。
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