前回の記事では、等級決定会議を最適化するプロセスについて解説しました。次のステップとして欠かせないのが「目標設定面談」です。ここでは、組織と個人の目標をつなぎ合わせ、従業員が目標に向かって自発的に取り組むための仕組みを整えます。今回は、目標設定面談の意味と意義、そしてその進め方について解説していきます。

目標設定面談の本質:組織貢献と個人成長の両立
目標設定面談は、単なるタスク管理や調整のための手続きではなく、組織の目標を推進し、メンバー個々の成長を促す非常に重要な機会です。評価者(上司)と被評価者(メンバー)が直接対話を重ねることで、被評価者自身が業務に対するモチベーションを高め、目標を「自分ごと」として捉えることができるよう支援するものとなります。
目標設定面談の目的
1. 組織貢献と個人成長の統合:個人目標と組織目標との連動をはかり、個人目標達成が組織全体の成果や組織貢献に結びつくようにする
2. やる気の醸成:被評価者が目標の意義を理解し、自発的に達成に向かうための意欲を高められるように評価者がサポートする
3. キャリア形成の促進:目標立案・遂行・達成を通じて仕事経験を積み、スキルや専門性を高めて成長に繋げることで、長期的なキャリア支援を行う
目標設定は、単なる目標の共有にとどまらず、評価者と被評価者が共に協力し、「この目標がどのように個人と組織にとって意味があるのか」を明確にし、「よし、やってみよう!」という状態に向かっていくためのプロセスなのです。
目標設定面談の効果的な進め方
ここからは、目標設定面談を効果的に進めるための基本的なプロセスとポイントをご紹介します。この進め方はあくまで一例であり、各組織やメンバーの状況に応じて調整しながら活用することが大切です。面談を通じて、メンバーと目標の方向性をすり合わせるとともに、達成に向けた具体的な計画と支援体制を整えていきましょう。
1.事前準備:期待する役割の整理
面談の前に、評価者から被評価者に「期待する役割」を明確に伝えておくことをお勧めします。
- 組織で期待する現在の役割
- 業績面で期待する具体的な成果
- 行動・能力・キャリアデザインの観点で成長を期待すること
また、被評価者には、等級を踏まえた期待する役割や目標の指針を事前に伝え、その上で本人に目標案を考え、提出してもらいましょう。こうした事前の目標提出は、被評価者の自律的な思考と行動を促し、面談を建設的な議論の場へと導きます。評価者も、事前に目標案を確認し、組織の期待とどの点でギャップがあるか、補足すべきポイントが何かを整理しておくと効果的です。
2.面談当日の流れ
【1】面談の目的の共有
- 面談の目的や「目標設定がメンバーの成長と組織貢献の双方に繋がる」といったメリットを被評価者に伝え、面談の意義の理解を深めます。また、「目標はキャリアの次のステップにも重要な意味を持つ」という視点を共有することで、被評価者が前向きに目標設定へ取り組めるよう支援します。
【2】被評価者の目標案を確認
- 被評価者に、提出した目標の内容・達成基準・達成に向けた方法、そしてその背景や理由について、まずは自由に話してもらいます。
- 評価者は、話の途中で口を挟まず、最後までじっくりと耳を傾けます。その後、確認したい点があれば、丁寧に質問を重ねていきます。
【3】目標のすり合わせ
- 「組織目標や役割期待に合っているか」「本人の能力と沿うか」「将来のキャリアに繋がるか」などを確認し、必要があれば一緒に目標を修正していきます。
- 認識にずれがある場合は、改めて本人への期待を伝えた上で、その理由や根拠を丁寧に説明し、納得感のある調整を目指します。
【4】目標達成のための方法や支援について話し合う
- 各目標の難易度・重要度、達成方法について話し合い、具体的なステップや活動のイメージをすり合わせます。
- 必要なサポートやリソースを明確にし、それらの活用方法や、上司としてどのような支援ができるかを検討します。
- 等級に応じた目標の妥当性も確認しつつ、現実的でありながら挑戦的な内容に調整することが望ましいです。
【5】面談の振り返りとフォローアップ
- 面談で話し合った内容を最後に振り返り、疑問点があればその場で解消し、目標達成の意義と上司として提供できる支援を再確認します。
- 決定を保留した事項がある場合は、その解決策と次のフィードバックのタイミングを明確にします。
3.事後のフォローアップ
面談で合意した内容は、評価者と被評価者双方が確認できる形で記録しておきます。この記録は進捗確認や評価会議での参考資料にもなり、透明性のある評価を支えます。また、面談で合意した内容が確実に実行されているか、定期的にコミュニケーションを取りながらフォローすることが大切です。
評価者と被評価者の協働で生まれる目標設定のプロセス
1. 目標が「評価ハック」にならないようにする
被評価者側の「評価ハック」:
被評価者の評価を高めることが目的化してしまう「評価ハック」に陥らないよう、設定した目標が「組織目標の達成にどれだけ寄与するか」に留意しておくことが不可欠です。また、個人のキャリア形成にとっても、組織目標への貢献が意義あるものであることを伝え、目標設定を単なる評価対象ではなく、成長の機会へと変えていく姿勢が求められます。
評価者側の「評価ハック」:
評価する側のマネージャーがメンバーから良い評価をしてもらいたかったり、ネガティブなフィードバックがしづらいために、本来よりも高い評価を下す「評価ハック」も見受けます。評価者側にも評価制度の意義を理解し、その意義を実行してもらうことが大切です。
2. 目標を一方的に押しつけない
評価者だけが考えた目標を押しつけてしまうと、被評価者のモチベーションを損ない、目標の自分ごと化が難しくなります。たとえ目標案が未熟であっても、一度は本人に考えてもらうプロセスを設けましょう。その際、目標設定がもたらす成長やキャリアの意味がしっかり伝わり、共感を引き出せるよう工夫することが大切です。
3. 目標の難易度と達成感のバランスを取る
目標が難しすぎるとモチベーションが低下し、逆に容易すぎると成長の機会を逃します。等級や役割に応じた適切な難易度で設定し、達成に向けたステップも具体化していくことで、被評価者が着実に前進できるよう支援しましょう。
まとめ
目標設定面談は、従業員のやる気を引き出し、組織と個人の目標をリンクさせるために不可欠なステップです。ただの管理タスクではなく「事業推進とメンバーの成長を加速するドライバー」となることが、この面談の本質です。
面談を通じて、目標が単なる「やらされ業務の一部」ではなく、自分の成長やキャリアに直結するものであると理解できれば、従業員のモチベーションは大きく向上します。効果的な目標設定を実現し、成長の成果を最大化するためにも、日常的なフォローアップを忘れずに行いましょう。
もし、自社の目標設定や評価運用に関してお悩みがあれば、ぜひ私たちにご相談ください。経験豊富なプロの視点から、貴社に最適な制度設計と運用のあり方を描くお手伝いをいたします。
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