人事制度は、企業経営の中で極めて重要な役割を果たしています。しかし、その全体像を把握し、効果的に構築することは簡単ではありません。ここでは、人事制度の基本概念から構築のポイントまでをわかりやすく解説します。
人事制度とは
人事制度とは、企業の重要な経営資源である従業員に対して、計画的かつ適切な理念や基準に基づいて、一貫した人材管理を行うための仕組みやルールのことです。具体的には、従業員の採用、育成、評価、報酬、配置などの制度が含まれます。
適切な人事制度がもたらす効果
・企業の成長と従業員の成長の調和と持続
・組織全体の一体感・コミットメントの醸成
・従業員のモチベーション向上やパフォーマンス促進
・組織の透明性と公平性の向上
人事制度が重要な5つの理由
1. 企業成長の基盤になる
人事制度は、企業の持続的な成長を支える基盤です。適切な人事制度が整備されていれば、従業員の能力や意欲を最大限に引き出し、企業の目標に向かって組織全体が一体となることができます。
例えば、業績と連動した評価制度を導入することで、従業員は目標達成に向けてより意識的に取り組み、企業全体の業績向上に寄与します。
2. 組織の一貫性と透明性をもたらす
人事制度は、企業の価値観や経営方針を明確にし、組織全体に一貫性と透明性をもたらします。例えば、等級や評価項目を設定することで、従業員は自分が評価される基準を理解し、公平感を持って働くことができます。
3. 経営戦略の具現化に貢献する
人事制度は、経営戦略を実現するための重要な手段です。企業のビジョンや成長戦略を制度に反映させることで、従業員同士が同じ目標に向かって行動することができます。例えば、グローバル展開を目指す企業であれば、語学力や異文化理解を支援する教育制度や評価要素などを入れることで、従業員の意識や意欲を高めることに繋がります。
4. 変化への対応力を育む
市場環境の変化に柔軟に対応できる組織をつくるためには、適切な人事制度が不可欠です。例えば、デジタル化が進む業界では、IIT関連のスキルを評価・育成・昇進の対象とすることで、組織全体のデジタル対応力を高める方向づけを行うことができます。
5. 持続可能な成長を促進する
公平で納得感のある人事制度は、従業員の定着率を高め、企業の持続的な成長を促進します。柔軟な働き方を可能にする制度設計により、長期的な就業意欲を維持し、組織の安定性を保つことができます。
人事制度の全体像
人事制度の全体像を理解することは、効果的な制度構築の第一歩です。ここでは、基幹人事制度の3つの柱と広義の人事制度について解説します。
基幹人事制度の3つの柱
等級制度
等級制度は、従業員の能力や役割に応じて分類する仕組みです。これにより、従業員のキャリアパスが明確になり、成長の道筋を示すことができます。
例:
・職能等級制度:スキルや能力に基づく等級
・役割等級制度:担当する役割の大きさに基づく等級
・職務等級制度:職務内容や責任の重さに基づく等級
評価制度
評価制度は、従業員の業績や行動を評価し、その結果に基づいて処遇を決定する仕組みです。公正で透明な評価制度は、従業員のモチベーション向上につながります。
例:
・目標管理制度(MBO):期初に設定した目標の達成度を評価
・成果評価:業績目標の達成度を評価
・プロセス評価:目標達成に向けた過程を評価
・バリュー評価:企業が重視する行動や価値観を評価
賃金制度
賃金制度は、従業員の貢献に応じて適切な報酬を与える仕組みです。基本給、賞与、手当などが含まれます。
例:
・年功給:勤続年数に応じて上昇する給与体系
・役割給:担当役割に求められる責任に基づく給与体系
・職務給:職務の価値に基づく給与体系
・成果給:個人やチーム、企業全体の業績に基づく給与体系
広義の人事戦略
基幹人事制度に加え、従業員と組織を支える広義の人事戦略や制度には、以下の要素が含まれます。
1. 採用:必要な人材を確保するための仕組み
2. 育成:従業員のスキルや知識を向上させるための仕組み
3. 異動・配置:適材適所を実現するための仕組み
4. 労務管理:労働条件や時間を管理する仕組み
5. 福利厚生:従業員の生活をサポートする仕組み
6. 安全衛生:従業員の安全と健康を守るための仕組み
7. 組織開発:組織の効率や生産性を向上させるための仕組み
人事制度構築の6ステップ
人事制度の構築は、以下のプロセスを踏むことで効果的に進めることができます。

1. 企業のビジョンと価値観の明確化
まずは、企業が目指す方向性や価値観を明確にします。これが人事制度の基盤、悩ましい判断の際に拠って立つ基準となります。
2. 現状の把握とギャップ分析
現在の組織の状況を分析し、理想とする姿とのギャップを明確にし、課題を明らかにします。この課題を解決していくことが、人事制度構築の目的となります。
3. 基本方針の策定
ビジョンや戦略、現場の実態を踏まえ、人事制度の基本方針を策定します。「私たちはなぜこの事業を営み、どこに向かって、何を実現しにいくのか」、この方針が、具体的な制度設計の指針となります。
4. 制度の設計
基本方針に基づいて、具体的な制度設計を行います。等級制度、評価制度、賃金制度など、各要素について「なぜこのアプローチなのか」根拠をもった上で詳細を決定します。
5. 試行運用と改善
設計した制度を試行的に運用し、フィードバックを基に改善します。
6. 全社への展開と定着化
改善した制度を全社的に展開し、定着を図ります。運用後も定期的に見直しを行い、環境の変化に対応します。
人事制度構築で注意すべきポイント
人事制度を構築する際は、以下のポイントに注意しましょう。
1. 経営ビジョンとの整合性
人事制度は企業の経営ビジョンや戦略と整合性がとれていることが重要です。経営陣とのコミュニケーションを密に取り、企業の目指す方向性を制度に反映させましょう。
2. 現場の現実状況の反映
制度の利用者である従業員の実際の業務状況や課題を正確に把握し、制度上での解決策に繋げていくことが重要です。現場の実態を踏まえ、実効性のある制度を作りましょう。
3. 合意形成
新しい制度の導入や変更には、経営陣と従業員の双方の理解と合意が必要です。特に評価制度運用の主役は現場のマネジメント層であり、彼らのコミットなくしては進みません。丁寧な説明と対話を通じて、納得・合意を導きましょう。
4. 柔軟性の確保
事業環境の変化に対応できるよう、あまり精緻に作り込みすぎず、制度に一定の柔軟性を持たせることが重要です。定期的な見直しと改善のプロセスを組み込んでおきましょう。
5. 公平性と透明性の確保
評価基準や昇進・昇格の条件など、制度の核心部分については特に公平性と透明性を確保することが重要です。これにより、従業員の信頼を得ることができます。
6. 法令遵守
労働関連法規を遵守することは言うまでもありません。コンプライアンスに配慮した制度設計を心がけましょう。
おわりに
人事制度の構築は、企業の成長と従業員の成長を両立させるための重要な取り組みです。一朝一夕には完成しませんが、継続的な改善を重ねることで、より良い制度を作り上げることができます。
本記事で紹介した全体像や構築のポイントを参考に、自社に最適な人事制度づくりに取り組んでみてはいかがでしょうか。なお、今後は評価制度構築の各プロセスの中での重要な観点やポイントについても別途記事でお伝えしていく予定ですので、ぜひそちらも御ご覧ください。
また、弊社では、事業成長を推進の要である等級・評価制度の最適化に向けたサポートを行っています。貴社の方向性と価値観を踏まえてご支援いたします。ぜひお気軽にお問い合わせください。
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