この記事は2023年8月9日に弊社の森数がVoicyでお話した#75 組織崩壊はなぜ起こるのか?を元に記事化したものです。
気になる方はVoicyもチェックしてみてください!
組織崩壊をもたらす原因3つ
退職が立て続けに起こる、しかも優秀な人から辞めていく、という現場を目撃したことがある方も多いのではないでしょうか?先にお伝えすると、全ての退職が悪いわけではありません。ただ、今回のテーマは組織崩壊となるため、崩壊をもたらす退職という観点でお話していきます。
組織崩壊する原因も会社によって異なるのですが、コミュニケーション不全が原因となるケースが多いように見受けます。代表的なものは以下3つです。
- 誤った心理的安全性
- 「言わなくてもわかるよね?」という幻想
- 経営の言っていることとやってることが違う
コミュニケーション不全はあくまで組織崩壊の序章です。第1段階、第2段階と段階が進み、取り返しがつかない事態になる前に姿勢を正し、改善していくことが大切です。

引用:ジム・コリンズ / 山岡洋一『ビジョナリー・カンパニー3 衰退の五段階』日経BP
誤った心理的安全性
様々なケースがあるのですが、”仲良しを強要される”、”率直に意見を言うことと、言いたい放題に意見を言うとことを吐き違えてる”、”同調圧力によって感じた違和感について発言できない”という事例が代表的です。
前提として、メンバー間の仲が良い方がいいですよね。ただ、仲が良いから言いにくということもあります。仲が良いチームは、自然と醸成された共通認識で動いてることも多く、途中参加の人は疎外感を感じることあります。「とてもウェットな時間を強いられて、雰囲気が合わなかった」といういう声もよく聞きます。仲良しは強要されるものではないですから当然の意見かと思います。
率直に意見を言い合えるということは、良い関係だとは思うのですが、言いたい放題に言うことは違います。遠慮はしなくていいけど、配慮は必要だと常々思っています。
ヘルシーコンフリクト(※)という言葉を聞いたことがあるかもしれませんが、感情の対立がヘルシーコンフリクトになることはありません。建設的な意見の対立が起こる組織が本当に心的安全性が保たれた状態だと思います。
(※)ヘルシーコンフリクト:健全な対立。コンフリクトマネジメントを適切に行い、対立のマイナス面を抑え、プラス面を活かすこと。
感じた違和感について発言できないことも結構ありますよね。トップの言うことが絶対で言っても無駄という気持ちもあれば、同調圧力で言えないということもあります。
例えば、少し前にX(twitter)で話題になっていた、モメンタム(※)を強要される話はご存知でしょうか?「みんなで成長するんだ、モメンタムを起こすんだ」という気持ちでいることが正しいとメンバーに強要し、「今のままだと難しいのでは?」「こうした方がいいのでは?」などメンバーから反対意見が出ると、「そういう意見を言う人はやる気がない」と反対意見を言ってはいけない雰囲気が醸成されてしまいます。これから起こりうることへの懸念すら潰されてしまい、事前に対策を打てない悪い流れを作ってしまいます。反対意見があることで視点が増えて、より良い方向に向かえるはずなのですが。
(※)モメンタム:「この事業は成長する」と感じられる“勢いや空気”。
心理的安全性が高い状態とは、チームパフォーマンスが最大化される状態だと私は思ってます。ですから、反対意見も受け入れられるかどうかが、心理的安全性が保たれている職場かを見極めるポイントの一つでもあります。
心理的安全性について以下のnoteでも紹介していますので気になる方は是非ご覧ください。
「言わなくてもわかるよね?」という幻想
よく経営者の方から「メンバーが十分なパフォーマンスを発揮していない」とか、「マネジメントが効いてない」と相談を受けます。
例えば、「『十分なパフォーマンスとはどういう状態を指すのか話したことはありますか?』『今の状態からだと目標から逆算するとギャップがあるからアクションが必要だ』などコミュニケーションとったことありますか?」って聞くと、大抵皆さん何も話していないのです。
「いやみんな大人だし言わなくてもね」とか、「スタートアップ選んでるんだから自立自走できるよね」とか、「前職でもマネジメントや役員ポジションに就いてたんだから言わなくてもそれはわかるよね」、「わざわざ言う必要あります?」っとおっしゃるのです。
当たり前ですが、自分の意見を言わなくても伝わることはまずありません。言わないと伝わらないですしわからないですし、考えが擦り合うことはありません。
ですから、「いつまでにこういう状態であるといいよね、こういうことがお互いにとって必要な状態ですよね。そのために何をしましょう?」といったコミュニケーションを取らないいけません。目標へのビハインドが起きているのは、メンバーの実力値の問題なのか、そもそも意識の擦り合わせができていないだけで、メンバーは経営者が課題に思っていることに気付いていないだけなのかもしれません。本当の課題がどこにあるかわからないので、コミュニケーションを取って確認することが大切です。

この問題の根底には、経営と現場との実力差や視座の違いがあると思います。スタートアップ経営者の友人が、自分の感覚で「この時間あればこのぐらいの量の仕事ができるだろう」と考え、実際にその量の仕事をメンバーに依頼したらパンクしてしまったという話をしていました。
相手と自分は違うので、前提を揃える必要があります。「言わなくてもわかるよね?」というのは幻想だと思った方がいいです。誰しも自分が見たいように世界を見てます。私が見ている世界と皆さんが見てる世界が全く同じということはあり得ません。
「メンバーのコミットが足りないんだよね」とご相談を受けることがあるのですが、それに対しても「それは、そうなりますよね」と思います。なぜなら、主要株主である経営者とメンバーとでは立場も視座も責任の範囲も全て違います。同じ熱量で同じ視点で仕事をすることを求めたい気持ちもわかるのですが、実際に求めてしまうのは間違いです。
”みんな違って当たり前”と”言わないとわからないよ”という共通認識を全員が持つとが大切だと思います。この考え方は、期待しないということと同義ではないので要注意です。人と自分は同じではないという前提に立って、丁寧に粘り強くコミュニケーション取り、擦り合わせていくべきという意味であって、「言わなくてもわかるようね?できるよね?」では少し乱暴だという話です。
経営の言ってることとやってることが違う
実際には、言ってることとやってることが違うわけではないけれど、そう見えてしまうことがあります。例えば、到達したいビジョンがあるとします。今はその階段を上る途中でビジョンからしたら一見遠いことでも取り組まなければいけないこともあったり、ビジョンにまっすぐ向かう道ではなく、横にそれた道やステップを踏まなければいけないこともあります。
スタートアップだと経営メンバーが意思決定することが多いのですが、色々なことを考え尽くして関係者とも議論して、その結論に至っているのだけれども、その過程はメンバーには見えません。
ですから、経営から「この施策をやります」とメンバーに決定が下りてきた時に「なんで?言ってたことと違うよね?」「ビジョン達成にこのステップ必要なの?」と捉えられやすくなってしまうのです。もちろん経営が説明責任を果たすだけじゃなくて、説明を受けた側には質問責任があると思ってます。
経営は説明責任を果たす、メンバーは質問責任を果たす。このコミュニケーションを怠ってすれ違ったまま組織が崩壊していく姿をたくさん見てきました。どんなにコンディションが良い組織でも人数が増えて、事業フェーズが変われば揺らぎは発生します。
スタートアップ界隈でよく聞く”10人の壁”や”30人の壁”などありますよね。組織が大きくなると縦割りになり、部門間のハレーションが起きやすくなります。これは社員の優秀さや性格の良さといった個別要因とは関係なく、人間の本能として起きるのです。
社員と経営のスレ違いについて紹介しているnoteもあるので、ご興味ある方はチェックしてみてください。
まとめ
「自分たちにはそんなこと起こらないよね」と対岸の火事として捉えるのではなく、いつか組織崩壊の兆しは起こり得るものという前提で組織を設計し、諦めずに粘り強くコミュニケーションをしていくことが大切だと思います。
そうはいっても、「実際何からやったらいいかわからない」「うちの組織の状態って客観的に見てどういう状態なの?」とご不安な方はまずご相談をしていただければと思います。