本記事について
この記事は、2024年2月7日に弊社の森数美保がVoicyでお話した#99 第一想起(※)されるセルフブランディング戦略を元に作成した記事です。
(※)第一想起:”シウマイ弁当といえば崎陽軒”、”ロボット掃除機といえばルンバ”、”タブレットといえばiPad”といったように、真っ先に思い浮かぶモノやブランドを指すマーケティング用語。
森数美保を初めて知る方はコチラも是非ご一読ください。
第一想起を獲得する方法
「第一想起は、大企業のブランディングの話で個人では無理」と思う方もいるかもしれませんが、そんなことはありません。採用戦略においても同じことがいえます。無名な会社であったとしても、そこで働いてる人がいる限り魅力はあります。光を当てれば、光るもの(魅力)を持っています。魅力を見つけて徹底的に光らせる、それが個人としてのブランディングの方法であり、第一想起されるコツです。これまで私が携わったブランディング施策を例に挙げて、セルフブランディング方法についてお話します。
ケース①SNSでのエンジニア採用広報
以前、私は株式会社Misoca(以下、Misoca)というスタートアップで採用担当として働いていました。Misocaは見積書・請求書を作るSaaSサービスであり、ユーザーだけで操作して完結できるサービスでした。そのため、中の人が見えづらいという課題があったのです。
中にいるエンジニアは皆優秀で当たり前のレベルが高く、「こんなことをSNSで呟くことでもない」「アピールするまでもなく当たり前のこと」と社外への発信には消極的でした。そこで、採用広報施策として、X(Twitter)でエンジニアのフォロワーを増やそうと考えました。
私はエンジニアではないため、技術的なことは投稿できません。まずは、どのように認知を取るかを考え、”非エンジニアから見えるエンジニアの世界”というコンセプトを決めました。次に、テック企業のエンジニアから”Misocaはイケてるエンジニアが集まってる会社”という認知を取るため、投稿内容を考えました。
コアな技術的な発信はエンジニアに任せ、私がエンジニア文化に触れて、驚いたことやかわからなかったことを中心に投稿するようにしました。結果、Misocaに在籍していた時代のX(Twitter)のフォロワーのほとんどがエンジニアとなり、一定成果を出すことができました。
当時は、Lapras、Findy、Forkwellといったエンジニア採用のサービスが出始めたころであり、まだ採用事例などは世の中に出回っていませんでした。エンジニア採用についてのノウハウやナレッジを欲している人に向けた発信を試みると、狙い通りHR系の人もフォローしてくれるようになりました。
この経験から、”発信する目的”と”キーワード”を決めて発信し続けることで、個人でも一定認知を取りに行けることを確信しました。
ケース②アウトソースのイメージ払拭&再構築
Misocaでは、本名で活動してたいたのですが、次に転職した株式会社キャスター(以下、キャスター)では旧姓の”森数”で活動しようと決めました。当時のキャスターでのボス、石倉さんからは「せっかく認知取れてるのに、名前を変えたらもったいないよ」と言われました。けれども、SaaS業界からHR業界に戻ってビジネスをするならば、旧姓の方が有利だという自信があったのです。”森数”は珍しい名字で覚えやすく、長く働いた転職エージェントでは”森数”の名前で仕事をしてきたからです。名前で認知を取るために、ビジネスネームを旧姓に変えました。
キャスターに転職して最初に関わったサービスは、採用代行事業”CASTER BIZ recruiting”でした。当時は、”採用は自社でやるべき”という考え方が根強く、”重要な組織戦略である採用を外注することは恥ずべき行為”という風潮がありました。”外注に依頼する業務はコアなものではなく、ノンコアな業務であるべき”という意識は今でも強いと感じます。こうした外注へのパーセプションチェンジ(※)を推進し、新たなブランディングで認知を取りにいこうと思いました。
(※)パーセプションチェンジ:ターゲットがもともと抱いていた印象やサービス・製品を再定義し、新たな認識を植え付けることを指すマーケティング用語。
そこで、”CASTER BIZ recruitingと組むのが最高にCoolでイケてる会社の証”だと思われる世界を目指しました。”ノンコア業務ではなく、コア業務をまるっと依頼できる、それは信頼できるプロ集団だから”という印象を広めていこうと考えました。
その第一手として、採用はその会社の中でしかできないものという概念を変えることを試みました。具体的には、”多くのクライアントの採用をワンストップで実行してきた森数美保だから見える世界”という発信を継続的にしました。採用は、経験則で語られがちですが”科学できる分野”です。
ですから、X(Twitter)やVoicy、本の出版、記念日協会に採用の日を登録する、などあらゆる手を尽くして、”採用は感覚でやるものではなく、科学できる分野であり、勝ち筋はあるある”と世の中に広め続けました。
その発信の一つがこちらnoteです。
次に、”採用代行は採用の一部を切り出すものである”という概念を変えるため、”ワンストップにプロが採用に携わる意味がある”という打ち出しをしました。”プロの採用チームが移籍してくるサービス”や”カレンダーを空けて待っていれば、会いたい人に会えます”などのキーメッセージを作りました。
そして、”採用によって事業が飛躍的に成長するスタートアップは、スケールに集中するためにも、CASTER BIZ recruitingと組むのが勝ち筋”という世界をいかに作るかを意識し、サービス内容やメッセージ発信をしました。
結果、CASTER BIZ recruitingの責任者になってから約2年半で売上2倍以上、組織人数を 1.5倍以上にまで成長させることができました。
ケース③キャリア戦略家としてのプレゼンス確立
以前働いていた転職エージェントのミライフでは、”キャリア戦略家”としての認知を強めようと思いました。キャリアには構成要素があり、人それぞれに合ったキャリア戦略というものが存在します。体系立てれば、どんな人に対しても戦略を立てられます。そのことを中心に発信しました。
そうすると、「キャリアに悩んだら森数に相談しよう」「キャリアのプロにしかできないことはある」という印象を広めることができました。キャリアコーチングとの差別化は特に意識しました。
キャリア戦略家には、キャリアコーチングの要素もありますが、キャリアは自分だけで完結することなく、市場と相関し、連動しています。”リアルな転職市場やキャリア市場に常に触れている転職エージェントだからこそキャリア戦略を正しく練れる”という強みを意識して発信してました。狙った認知を取るには、一貫とした立ち位置で、軸をブラさずに発信していくことが大切です。
以下noteは、キャリア戦略家として投稿した記事の一例です。
ブランディングの副次効果
CASTER BIZ recruitingのブランディングには副次効果があり、自社の採用にも良い影響をもたらしました。人事の中でも採用担当はエントリーポジション(初心者向け)だと思われており、採用という職種の中でも、”事業会社の人事の方がアウトソーサーよりもステータスが上”という印象が根強く残っていました。
人事>採用担当>RPOなどのアウトソーサー
けれども、プロの採用代行業者で働くメリットは大いにあります。採用は何が正解かわかりません。個人情報の塊であり、選考に関わる数字を外に出せないため、答え合わせもできません。採用担当が自分しかいない”ボッチ人事”の会社も多く、孤独やモヤモヤを抱えている方も多く存在します。
けれども、CASTER BIZ recruitingには、多くのお客様の採用事例や実績が集まるため、”採用の集合知”を学び、活かしていくことができます。集まったメンバーも採用経験者ばかり。困った時は気軽に相談できるため、孤独を抱えずモヤモヤもすぐに解消できる環境でした。
また、「採用は重要な経営戦略だ」と言われているけれども、営業などトップライン(売上高)を直接伸ばす職種の人ばかりが表彰・賞賛され、採用担当に光が当たる状況も多くはありません。対して、CASTER BIZ recruitingでは、みんながトップラインを伸ばす主役であるため、そういったモヤモヤからも解消されます。
こうして、”採用のプロ集団”という打ち出しに魅力を感じてくれた人が次々にジョインしてくれました。私自身が”採用のプロ”という認知を取り、徐々にサービス認知にスライドしていくブランディングを実施し、狙った認知を得ることができました。マーケティング費用をかけなくても、大企業でなくとも、個人のセルフブランディングによって大きな成果を得ることができるのです。光の当て方次第で魅力を見つけられますし、もっと魅力的にもしていけるのです。
まとめ
目的とキーワードを決めて徹底的にアウトプットすることがブランディグでは大切です。「それ森数さんだからできたんでしょ?」と言われることもありますが、違います。私も最初は、X(Twitter)もnoteもVoicyもフォロワー数一人二人から始まっています。”採用のプロ”や”キャリア戦略家”としてのブランディングも、狙って認知を取りに行きました。
たまたまバズっても認知を取るには繋がらないことが大半です。ですから、どう認知されたいかを”機能的な側面”と”感情的な側面”から考え、”届けたい相手にとっての価値”を徹底的に追求することがポイントです。自分が発信したいこと発信するのではなくて、受け取る相手のことを考えて、地道にコツコツとアウトプットする。そこが一番重要だと思います。