前回の記事では「理想の組織状態と推奨する行動の明確化」についてお話をしてきました。今回はその次のステップ、大方針の全社共有のあり方、メッセージングについてです。
従業員へのメッセージングは特にユアパトでは重要なフェーズとして捉えています。なぜなら、ただ大方針を「伝える」だけで終わっては意味がなく、「伝わる→行動がかわる」ことで初めて意味がある人事制度だといえるからです。人事制度によって目指す理想の姿に近づけるように、お客様とともに制度設計の意図や想いを込めた伝え方を練りに練っているフェーズです。
今回の記事では、従業員に伝える適切なタイミングや伝え方についてお伝えさせていただきます。

なぜ大方針が固まった段階で従業員に方針を伝える必要があるのか?
人事制度の詳細がまだ固まっていない段階でも、大方針が固まった段階で一度従業員に伝えることは制度を成功させるために必要なプロセスといえます。従業員に「なぜこの制度が必要なのか」「経営が何を目指しているのか」を早期に共有することで、以下のような効果が得られるからです。
1. 従業員の不安を軽減する
新たな人事制度に対して従業員は漠然とした不安を抱くことがあります。特に、制度の全体像が見えない場合は、疑念が生じ、モチベーションが低下するリスクが高まります。早い段階で大方針を伝え、「なぜその制度をつくるのか」「会社が何を目指しているのか」を明確にすることで、従業員の不安を和らげられます。
2. 従業員の協力を得やすくする
大方針が伝わることで、従業員は制度構築プロセスの意図や背景を理解し、協力的な姿勢を持つようになります。この段階でフィードバックを得る機会を設けることで、現場の声を反映し、制度完成後のスムーズな運用につなげることができます。
3. 従業員の納得感と共感を引き出す
経営の意思が早い段階で伝わることで、従業員は制度構築が単なる形式的な変更ではなく、会社の成長や自分たちの働きがいや働きやすさに寄与するものであると理解しやすくなります。これにより、従業員が自分の役割を理解し、目指すべき方向が共有されます。
方針共有のアジェンダ7ステップ
従業員に経営の意図が伝わり、期待する行動を引き出せる制度にするためには、伝え方をブラッシュアップすることが必要不可欠です。ここでは、従業員に大方針を伝える際のアジェンダの一例を示します。これらを参考に、自社にとって効果的な方針共有を行いましょう。

1. 導入と感謝の表明
冒頭では、従業員の日々の貢献に対して感謝の意を示し、今回の方針共有の場に参加してくれたことへの感謝を伝えましょう。このプロセスは、従業員との信頼関係を強化し、経営および人事からのメッセージを前向きに受け止めてもらうために欠かせないステップです。
「日々の皆さんの努力に感謝しています」という感謝の表明は、組織内でのポジティブな空気を作り出し、その後のメッセージを従業員が受け入れやすくします。特に経営陣からの感謝の言葉が従業員に伝わることで、方針発表に対する抵抗感を和らげる効果があります。
2. “これまで”と”これから”の姿を共有
次に、会社のビジョンと今後の目指す方向性を改めて説明します。「これまで」の実績や成長を振り返り、「これから」どこに向かうのか、そのために何が必要かを明確に伝えることで、従業員に共感を得やすくします。
「私たちはこれまで◯◯の成長に注力してきましたが、今後は◯◯市場への進出が重要な課題です」といった形で、現在の課題を共有しつつ、「これから何が必要か」「そのために皆の協力が不可欠であること」を伝えることがポイントです。この後に説明する制度の考え方についても肯定的に受けとめられやすくなります。
3. 自社の人事ポリシーの紹介(人・組織に対する考え方)
そして、会社の人事ポリシーや組織運営に対する基本的な考え方を共有します。例えば、「我々の会社は、従業員一人ひとりの成長が会社全体の成長につながると信じています」といった人事ポリシーを示すことで、従業員にとって制度構築の意義が理解しやすくなります。
人や組織に対する経営や人事の考え方が従業員に伝わることで、制度構築がどのような背景に基づいて行われているのかが明確になり、経営と現場の一体感が生まれやすくなります。
4. 人事制度のアウトラインの説明
この段階では、制度の詳細ではなく、アウトラインを説明します。「新しい制度では、等級と職位をしっかり紐づけ、これに基づいて評価を行います」「スタッフ職にも売上や利益目標を設定します」といったように、大方針に基づいた新制度の主要なテーマ・ポイントを示します。
重要なのは、これらの方針の背後にある意図をしっかり説明することです。例えば、「等級と職位が紐づいているのは、従業員の成長を可視化し、適正なキャリアパスを提供するため」といった理由を伝えることで、従業員は自身の成長と組織内での位置づけを理解しやすくなり、長期的なキャリア開発への動機付けにもつながります。
5. 運用の重要性を強調
制度は構築しても、それで完了ではありません。運用を続けながら制度をさらに改善し、より良い形にしていく必要があります。この場で、「制度がスタートした後も、従業員の意見を反映しながら改善していきます」というメッセージを伝え、従業員に主体的に制度運用に関わってもらう姿勢を促すことが重要です。
従業員の参加を促すことで、制度が現場にフィットしやすくなり、運用段階でのトラブルや不満を防ぐことができます。運用における改善の余地があることを強調することで、従業員は柔軟な制度の導入を期待しやすくなります。
6. 質疑応答
質疑応答は、従業員からの疑問や意見に耳を傾け、経営の意思や構築内容に対する理解を深めるための大切な時間です。この場では、どんな小さな質問でも歓迎するという姿勢を示し、従業員の声を積極的に取り入れるようにします。
質疑応答の場で出た質問や意見は、制度運用における改善材料としても有益です。また、従業員の疑問が解消することで、新人事制度への不安を軽減し、納得感を持たせることができます。
7. 今後の取り組みとスケジュール
最後に、今後の取り組みと制度構築のスケジュールを明確に伝えます。「次回の説明会では評価基準の詳細をお伝えします」「来月から新制度の試行運用を開始します」といった具体的なスケジュールを示すことで、従業員は制度構築の進行状況を把握しやすくなり、期待と安心感を持ちながら構築プロセスに参加することができます。
伝える際の留意点
ここまで大方針の共有内容について触れてきましたが、共有の際には、いくつかのポイントに留意することで、より効果的なコミュニケーションが可能になります。
1. 従業員の不安に対処する
この段階では、制度の詳細がまだ固まっていないため、従業員は不安を感じやすくなります。透明性を持って状況を共有し、「まだ全ては決まっていないが、ここに向かって進んでいる」ということを明確に伝えます。従業員が今後の見通しを理解できるようにし、不安を軽減させることが大切です。
2. 明確でシンプルなメッセージを繰り返す
メッセージは、簡潔でありながら一貫性を持って繰り返し伝えることが大切です。複雑な言葉や内容ではなく、シンプルに「この制度構築は◯◯という意味で、会社の成長にとって不可欠である」など、キーメッセージを強調し、従業員が納得しやすい形で伝えるようにします。
まとめ
人事制度の詳細が固まる前に、大方針を従業員に伝えることは、新制度を成功に導く要となります。経営の意思と目指す方向性を早期に共有することで、従業員の不安を軽減し、理解や協力を引き出すことができます。
もし、貴社の人事制度構築において、方針共有の手法にお悩みであれば、ぜひご相談ください。従業員に経営の意思が伝わり、行動が変わることにフォーカスした制度設計から運用までユアパトがサポートさせていただきます。
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