人事制度は、企業経営の中で極めて重要な役割を果たしています。前回の記事では、評価・等級制度の目的とスコープの設定についてお話をしてきました。今回はそれを踏まえた次のステップ、現状分析の話に入っていきます。
なぜ現状分析が重要なのか?
制度を効果的に構築・改定するためには、まず組織の現状を正確に把握することが不可欠です。現状分析は、組織の強みや課題を明確にし、制度改善の方向性を定めるための基盤を提供します。この段階で適切な現状把握・分析を行わないと、制度設計が組織の実態と乖離し、期待される効果を十分に発揮できないリスクがあります。
現状分析を行うことで、現在の組織がどのような状態にあり、どのような課題を抱えているのか、またどのような強みを持っているのかが見えてきます。これにより、人事制度の構築・見直しにおける具体的な指針を得ることができます。
現状分析で注目すべき観点
現状分析を行う際には、いくつかの重要な観点に注目する必要があります。これらの観点を網羅的に分析することで、組織の全体像を正確に把握し、必要な改善点を特定することができます。
1. 社員の意識面と行動面
組織内の社員がどのような意識を持ち、どのような行動を取っているかを分析することは、人事制度の改善にとって極めて重要です。意識面では、社員が会社のビジョンや価値観をどれだけ理解し共感しているか、モチベーションが高いかどうかを確認します。行動面では、日常業務やプロジェクトにおける社員の行動が、企業の期待する行動規範に沿っているかを確認します。
2. 組織の強みと課題
組織の強みを活かしつつ、課題を解決するための分析が求められます。例えば、強みとしては、社員の高いスキルセットや、チームワークの良さなどが挙げられるかもしれません。一方、課題としては、失敗を恐れないチャレンジ、コミュニケーションの不足や、評価基準の不明確さなどが考えられるかもしれません。これら両面を把握することで、どの部分を強化し、どの部分を改善すべきかが明確になります。
3. 現在の等級内容・評価基準と実態のギャップ
現行の等級内容・評価基準が、実際の社員のパフォーマンスや行動とどの程度一致しているかを確認します。例えば、等級定義や評価基準が不明確だったり、実際の業務と評価内容がかけ離れていたりする場合、それが社員の不満やモチベーション低下の原因となっているかもしれません。このギャップを把握して洗い出すことが、制度改善に向けた重要なポイントです。
現状分析の4ステップ
現状分析を効果的に進めるには、体系的なアプローチが必要です。そのための具体的なステップの一例をご紹介しましょう。

1. 分析目的の設定
最初に、現状分析の目的を明確にします。これは「現状を把握して制度改善に役立てる」ことですが、その中でも特に注目したいポイントを設定します。たとえば、「社員のモチベーション低下の原因を探る」や「評価基準の不透明さを解消する」といった具体的な分析目的を設定しておくことが重要です。
2. 情報収集
次に、社員インタビューやアンケート、過去の評価データの分析などを通じて、必要な情報を収集します。
社員インタビュー:個別に深掘りすることができ、特定の課題や感情を明らかにすることができます。
アンケート・サーベイ:組織全体の意識や行動パターンを把握するために有効です。
3. 分析
収集したデータを分析する際には、定量分析(広く情報を集める)と定性分析(深く情報を得る)を組み合わせることが効果的です。
定量分析:数値データを用いて、全体におけるボリュームや度合い、現状のパフォーマンス傾向やギャップを明確にします。
定性分析:インタビューやアンケートの自由回答などをもとに、社員の意識や感じている問題意識、課題感を深掘りします。
4. 認識合わせ・仮説の構築
分析結果を基に、関係者で認識を合わせ、今後の制度改善にどう反映するかの仮説を構築します。この段階では、「現在評価している成果・行動」と「今後評価したい成果・行動」の仮説が見えていると、評価制度や等級制度への接続がスムーズです。
現状分析を進める際の工夫ポイント
現状分析を効果的に進めるためには、いくつかの工夫が必要です。
1. 社員インタビューの活用
社員インタビューは、個別の意見や感情を深掘りするために非常に有効です。インタビューを行う際には、特定の課題だけでなく、社員の強みや良い点についても尋ねるようにしましょう。また、インタビュー内容は採用やオンボーディングにも活かせるように設計すると、より広範なフィードバックを得ることができます。
2. 情報の視覚化
分析結果を伝える際には、得た情報を視覚化することが有効です。グラフやチャートを用いることで、視覚的に情報を理解しやすくし、組織全体での共有が容易になります。これにより、プロジェクトチーム内での認識を統一しやすくなります。
3. 共通の理解を持つ
現状分析の結果をもとに、プロジェクト内での認識を揃えることが重要です。分析結果がどのように制度設計に影響するのかを全員で理解し、次のステップに進む準備を整えます。
おわりに
適切な現状分析を行うことで、組織の強みと課題が明確になり、人事制度の改善に向けた具体的な指針が得られます。このプロセスを丁寧に進めることで、組織全体が一体となって同じ方向を目指すことができ、この後の制度設計がスムーズに進みやすくなります。
もし、現状分析をどのように進めるべきか迷っているのであれば、ぜひご相談ください。私たちは、貴社の現状を的確に把握し、最適な制度改善への道筋を一緒に描くお手伝いをいたします。今の組織をしっかりと見つめ直し、次のステップへ進むための第一歩を踏み出してみませんか?
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